土屋は戸惑っていた。

下山のあまりにも怠惰な1日の生活を目の当たりにして、

納得できない気持ちでいっぱいだった。



1日5分のトレードとは聞いていたが、

まさかこれほどまでに何もしないとは思っていなかった。

相場やニュースのチェックなど、

多少なりとも株トレードに関連する行動をするものだとイメージしていた。



しかし、下山は一切そんな素振りを見せなかった。

それどころかやったことといえば、

ゲームをして、ご飯を食べて、昼寝をする、

ただそれだけだった。

正真正銘、本物のニートだった。





しかし、

『こんな堕落した状態でも本当に稼げてしまうのであれば

やはり下山は本物なのかもしれない』

という期待を土屋が抱いているのも事実だった。



ただのニートか?それとも天才か



土屋の心の中には期待と不安が入り混じっていた。

STORY 09

ニート生活に成立する荒稼ぎ投資手法2
ー汚名返上ー

INTRODUCTION

そして、14時38分。
昼寝から目覚めた下山が、ついに動き出した。
下山が一体どのような行動をとるのか、その一部始終を土屋は静かに見守るつもりだったが・・・

シモちゃん、おはよー!


おはようございます。


今14時38分やで。
そろそろ株始めるんか?
ていうかそろそろマーケットが閉まってまうんちゃうんか?
15時までやろ?


はい、・・・株やります。


おっ、ほんまかいな!
ここに来てようやく株トレードやな!
さあ見せてくれ、下山流の株取引を。

まずは何をするんや?


下山は枕元に置いていたガラケーを手に取り、操作を始めた。
そして土屋は、スマホの画面にストップウォッチを表示させ、時間を計り始めた。



株価を確認して、注文って感じです。

おっ、ついに注文やな!
そのガラケー、おれにもちょっと見せてくれや!


土屋の大きな声が、下山の部屋に響く。
やはりこの男、何事も黙って見ていられない人間だった。



しょうがないなあ・・・


ゴロゴロと寝っ転がりながら注文を出していた下山は、面倒くさそうに土屋にその画面を見せた。



今の状況をちゃんと説明してくれや!


いや・・・今、決済の注文を出したところです。
今日は29,000円の利益ですね。


ほう、29,000円!
ほんでほんで?
次はどうするんや?


今日は以上です。


はー!?
終わり!?
ありえん!!


土屋がストップウォッチを確認すると、その間わずか1分9秒だった。

「チャートを確認したりニュースをチェックしたり、実はそれなりにトレードに関連してやることがあって、結局は10分、20分はかかる」
そんな展開を予想していたが、その予想は完全に裏切られた。

5分どころか、たったの1分で完了してしまったそのトレードに、土屋は驚きを隠せなかった。



あっ、でももう一つ仕事があるんですよね。


おっ、やっぱまだ仕事あるんやんけ!
さすがに今ので終われるわけ無いわな。
何や何や?
何するんや?


実は、配信サービスというものをやっていまして・・・


えっ、配信サービス?
そしたらしもちゃんのトレード自体はもう終わりっちゅうことか?


そうですね、自分の取引はさっき終わりました。


・・・ありえん、ありえん、ありえん。
ありえんで!!


土屋は動揺していた。
「こんな楽に稼げてしまってはいけない・・・」
目の前の現実が理解できなかった。



ていうかその配信サービスって何や?


あー、それも説明必要ですか。
簡単に言うと、その通りに取引してしまえば儲かりますよ、っていう答えを教える配信サービスです。


えっ、そんなんあるんかいな!?
それめっちゃ熱いやん!
何も考えんと思考停止状態で勝てるっちゅうことやろ?


まあ、そうですね。


うーわ、それおれも配信してほしいわ。
頼む、配信してくれや。
あっ、安心してくれ。
もちろん費用は支払うで!!


いいですけど、配信にずっと頼りっぱなしだと本物のトレード技術は身につかないですから気をつけてくださいね。


なるほど、分かった分かった。
ほんで配信のメール作成は今どんな感じや?


今日は決済の指示をするんで、いろいろメールの文面変えないといけないので大変です。


ガラケーで文字打ってるからちゃうんかい。
そんなもんパソコンでやれや。


いやー、パソコンのメールは操作が覚えらんないんですよ。


メール送るのに覚えることとかあるんかいな(笑)
あんなにゲームやっとるのに、なんでパソコンに詳しくならへんのかほんまに不思議やわ。

まあでも、しもちゃんがこれだけパソコンできんでも稼いでるっちゅうことは、パソコン使えへんおじさまには朗報ではあるわな。


ちょっと黙っててもらって良いですか?
14時45分までに送らないといけないので。
本当は14時50分まで待てくれたら良いんですけど、それじゃ間に合わないみたいで・・・


人に黙れとか言っとるけど、しもちゃんのほうこそブツブツとまあまあうるさいで(笑)


・・・はい、完了しました。
今日の仕事は全部終わりました。


えっ、もう仕事終わり!?
どんな人生やねん!

こんなん生活しとったら罰当たるんちゃうか?
って心配になるくらい、しもちゃんマジで仕事せえへんなあ。


人生楽しまな損、ってどこかの社長が言ってましたよ。


ワシの言葉やないかい!
楽しむにしても仕事があまりにも短時間すぎて、おれでさえ若干ひいとるわ。


まあまあ。
何と思ってもらっても結構ですよ。

そしたらドラゴンポーカーを・・・


うーわ、またゲームかいな。
マジで廃人やなあ。


あーーー!!!


どうしたんや!?


今日17時までメンテナンスだった!!!!
最悪だ・・・こんな時は・・・


しもちゃん、ちょっと大げさすぎるで。


寝よう。


なんでそうなんねん!(笑)


さっきの昼寝、全然疲れがとれてないんですよね。


好きなだけゲームして、何がそんなに疲れることがあんねん(笑)


これでも神経使って遊んでるんですよ。


もう勝手にせえや。
ほんならおれも寝るわ。


下山の部屋で、またしてもおっさん二人の昼寝が始まってしまった。

それにしても、土屋にとって下山がわずか1分で取引を終えてしまった事実は、あまりにもショックだった。
そして、何よりも本当に利益が出ていたことが衝撃的だった。

たった1分の間に29,000円稼げるとしたら、時給換算すると174万円ということだ。



幅広い人脈を持つ土屋といえども、さすがに時給174万円の人間には会ったことがなかった。
"効率が良いトレード"とかその程度の次元ではなかった。
まさに異次元の株式トレードだと痛感した。

そしてさらに、たった1分のうちに29,000円を稼ぎ出してしまったことに、特別喜びを見せない下山に対して、心の底から違和感を感じた。

「トレードをしている時は、利益をとっても嬉しくもないし、含み損が出ても悲しくない、そんなロボットのような感情が必要なのだろうか?」

土屋の脳内で、様々な思いや疑問が錯綜する。

下山の昼寝に合わせて寝ようと目を閉じたが、土屋は興奮を抑えきれず全く眠れなかった。



約1時間後・・・



ふあ〜


下山が大きな伸びをしながら目覚めた。



やっと起きたんやな。
ほんまによおこんな昼間っから眠れるなあ。
幼稚園児でもこんなに寝えへんで。


下山は土屋の言葉をスルーし、パソコンの前に直行した。
そして早速ゲームのズーキーパーを始めた。



あー、ダメだ。
本当に土屋さんがいると調子が出ない。


また対戦に負けてしまい、ブツブツ言いながら、寝起きの腕立て伏せを始めた。



ハハハ、しもちゃん、あかんたれやなあ(笑)


とそのとき、腕立て伏せを終えた下山がガラケーを取り出した。



おっ、今度は何を始めるんや?


FXの利益でも確定しておこうかなと思って。


FXー!?
それ初耳やで!
しもちゃんFXもやっとるんかいな!?
そんな大事なこと早よ言えやー!


あれ、言ってませんでしたっけ?
ていうか、FXってそんなに大事なことですか?


FXもできるんやったら、また幅が広がるやんけ!!
で、今はFXで何をしとるんや?


今は利益確定ですね。
残りカスなんで大したことないですけど25,000円です。


25,000円の利益確定?
チャートも見ずに!?


はい、チャートとか見ないです。


まだそんな隠し玉を持っていたとはな・・・。
ほんま隅に置かれへん男やで。

ちなみに株とFXやったらどっちが儲かるんや?


儲かりやすいのはFXですね。


マジか!!
なんでFXの方が勝ちやすいんや?


1つには、値動きが大きいということがありますね。
株よりも大きく動くので、その分早く利益が出ますね。


ほんならなんでおれにFXを先に教えへんかったんや!?
FX教えてくれやー!!!


イヤです。
面倒くさいんで。


なんでやねん(笑)
そんなケチくさいこと言うなや。
教えろやー!


いや、面倒くさいっていうのもあるんですが、真剣な話、株で基本ができていない人がFXに手を出しても絶対に勝てないんですよ。
土屋さん、まだ株トレードも始めてないのにFX始めちゃったら、絶対資金溶けまくりますよ。


いーや、そんな言葉は信じへんで。
しもちゃんのことやから、ただ教えるのが面倒なんやろ?

言っとくけど今ビデオ回しとるからな。
ここで教えへんってしもちゃんが言い張ったら、しもちゃんが心狭い人間やっちゅうことがバレることになるけどええんか?


だから心狭いとかじゃないんですって。
安易にFXに手を出すのは危険なんですよ。


・・・分かった、1000歩譲ってしもちゃんの言葉が真実やとしよ。
それが真実なんやったら、おれが株式トレードちゃんとできるようになったら、FXトレードも教えてくれるってことでええな?


まあ考えておこう。


おいおい、めっちゃ偉そうやないかい!
考える必要あらへん、教えてくれたらええんや。


いや、教えてもらう人の態度じゃないですよね?


まあそう言うなや(笑)
一緒にお昼寝した仲やないか。


下山が言っていることは真実だった。
FXはあまりにも値動きが激しく、株式トレードのように"ストップ高"、"ストップ安"という値幅の上限や下限も設定されていない。

さらにレバレッジも国内の証券会社を使用した場合25倍、海外の証券会社を使用すると500倍800倍という設定が可能になり、
完璧にルールを設定し、それを守り抜けない人間は、あっという間に資金を奪い去られてカモにされてしまう可能性が非常に高い。

そのことを誰よりも熟知している下山は、安易にFXトレードを教えることはしていなかった。
FXは、トレードの基本がマスターできていない人間が手を出して良いものではなかった。




それはそうと、しもちゃん少しは外に出た方がええんちゃうか?


そうですか?


いや、だって今日外に出たんって昼飯食いに行った時だけやで?
あとは寝てゲームして・・・。
あかん、しもちゃんの身体がそのうち壊れてまうわ。

ちなみにしもちゃんは学生の頃、部活とかって何やっとったん?
やっぱ帰宅部か?
それかゲーム研究会とか?


違いますよ(笑)
確かにゲーム研究会とか高校のときあったら絶対入部しましたけど・・・、バスケ部でした。


なるほど。

おっしゃ!
ほんなら、こういうのどうや?
今からそこの公園行ってバスケの勝負しようや!
確かバスケのゴール置いてあったやんな?
ほんでしもちゃん負けたらおれにFX教えてくれるって約束してくれや。


えっ、土屋さんバスケ経験者ですか?


いや、ちゃうで。
だからしもちゃんめっちゃ有利や!


なるほど。
いいですけど、絶対自分が勝ちますよ。
そんな無謀な対戦で大丈夫ですか?
で、ちなみに自分が勝ったら何がもらえるんですか?


ん〜、アイスでもおごったるわ。


安っ!
FX教えることにどれだけの価値があると思ってるんですか!?
FXなめんなよ、と言いたい。


そういうことじゃなくてやなあ、しもちゃんバスケ部やってんから勝つに決まっとるやろ?
とにかく公園に行くで。
さっさと決着つけたるわ。


どの口が言ってるんだか・・・


16時28分、2人は新宿中央公園に到着した。
到着した瞬間、2人は顔を見合わせた。

公園にあったはずのゴールが無くなっていた。
残っていたのは板だけだった。




しもちゃん、どういうことやねん(笑)
ゴール無いやんけ!
なんとかしてくれや!


土屋さん本当に厄病神ですね。
今日はロクなことがないですよ!


それはこっちのセリフや。
まあええわ、板がゴールってことでやろうや。
1on1な。
先に3点取った方が勝ちや。


3分後・・・


土屋が1点も取れないうちに下山が3点先取し、試合はあっけなく終わってしまった。
そして息を切らしながら土屋が叫ぶ。



しもちゃん!
なんでも5分以内に終わらすその癖やめろや!!


いや、土屋さん弱すぎるんですよ(笑)


自分、バスケ部やんけ。
バスケ部やったら手加減せんかい!
もうええ、終わりや。
帰るで。


実は土屋はバスケ部にこそ入っていなかったが、それなりにはバスケに自信があった。
勝算が無かったわけではない。
そして実際に、スキルに関してそこまで大きい差があったわけではなかった。
しかし・・・、ただひとつ2人には決定的な違いがあった。

それは、感情面での違いだった。

『勝ちたい』という一心でゴールを目指した土屋に対して、下山は『負けない』という一心で立ち向かった。
勝ちにこだわりすぎて感情が燃えたぎっていた土屋は、感情のコントロールも、ボールのコントロールもできていなかった。

一方で
「負けなければ勝てる」という確固たる自信を持っていた下山は感情のコントロールも、ボールのコントロールも完璧にこなしていた。

実はこの試合を通じて、下山は今まで抱えていた不安が本物であるということを確信した。

「土屋は株トレード中に暴走してしまわないだろうか?」

という心配を前々からなんとなく持っていたが、その心配が的中していることを確信してしまった。
この時、下山は何も言わなかったが、折を見て土屋のマインドを矯正する必要があると思った。

土屋は約束のアイスをマンションの裏にあるスーパーで買い、下山に渡した。
そして2人は部屋に戻ってきた。



スポーツを終えて一言!


いやー、心臓がいたい。
久々にこんなに動きました・・・


運動できて良かったやんけ。
おれに感謝せなあかんで!


いや、感謝とかは無いですけど。
とりあえずシャワー浴びてきて良いですか?


おっしゃ。
シャワー浴びにいこ。


下山が風呂場に向かうと、土屋もその後を追った。



着いて来なくて良いですから(笑)
部屋でゲームでもしてて下さいよ!


いや、ここもビデオに収めなあかんやろ!
これこそスペシャルショットやんけ!
社長たちも喜ぶわ。
日高、しっかりビデオにおさえといてや!


はい、かしこまりました!


日高さん久々にしゃべりましたね・・・ていうかどこにそんな需要あるんですか(笑)


いや、需要が無いにしても、もしかしたらシャワー浴びながらチャートチェックするかもしれんやろ?


するか(笑)
そんな面倒なこと自分がすると思いますか?


あー、無いか(笑)
おっしゃ、ほんなら心置きなくシャワー浴びてきたらええわ。
シャワー許す!


言われなくてもそうしますよ。


10分後・・・


ドンドンドン、ドンドンドン、土屋が風呂場のドアを叩く。



トレーダー!
トレーダー!
どうしました!?
大丈夫ですか?


さっぱりした顔の下山がドアを開けた。



どうもしないですよ(笑)
何なんですか!!
シャワーくらいゆっくり浴びさせてくださいよ。


いや、何でも5分以内に済ませるのがしもちゃんやから。


土屋さん頭おかしいんですか(笑)
5分以内は株だけですよ。


そうなんかいな。
倒れてないか心配しとったんや。


はいはい、それはどうも(苦笑)


ほんでトレーダーは今から何するんや?


そろそろ寝ますかね。


なんでいっつもそうなんねん(笑)
今まだ17時43分やで!?
日が沈むと同時に眠るんか!?
健康的すぎるやろ!
いや、むしろ不健康か。


22時からまたゲームしないといけないので。
それではおやすみなさい。


やっぱ不健康すぎる・・・もうええわ。
今日はもう帰るわ。

ほんじゃな。
ゆっくり寝てくれや。


土屋は呆れていた。
限度を超えた下山の堕落ぶりに。
しかし、利益だけは今日1日で54,000円獲得していたという現実があった。
凄まじい費用対効果だった。

何が何だか分からなくなっていた。
下山の投資手法の底力を見せつけられた気がした。
土屋が何を言おうとも、54,000円という利益だけは疑いようのない事実だった。

土屋は事務所に戻った。
そして下山にお礼のメールを1通送った。

========================================================
From:土屋
To:しもちゃん
Title:今日はサンキュー!


しもちゃん

いやー、今日は何も無かったな(笑)
ただただゲーム三昧な1日やったわ。

ただ、しもちゃんの生態はしっかり把握できたで。
これがプロのトレーダーの在り方なんか?
ちょっと混乱しとるわ。

「こんなにゲームばっかりしてて、ラクして稼いでたらいつかしっぺ返しくらうんちゃうか?」

ってちょっと心配になるくらいラクに稼いどったなあ。

ほんまにこんなノリで稼げるんやったらマジで革命やで!!
ますます楽しみにはなってきたわ。

ほんで明日は約束してた、しもちゃんの取引履歴見せてもらうしな。

15時に日高が迎えに行くし。


ほんじゃなー^^


土屋

========================================================

22時、下山が長い眠りから目覚めて土屋からのメールを見て、テンションが下がった。



また明日もか・・・
鬱な気分になりながらメールを返信した。

========================================================
From:下山敬三
To:土屋社長
Title:Re:今日はサンキュー!


土屋さん

いやー、マジでテンション下がるんですけど。
明日もですか・・・

ていうか土屋さんはまだまだ分かってないですね。
言っておきますが、自分はただのゲーム好きじゃないですよ?
好きだけでゲームやってるわけじゃないんですよ。
いや、ゲーム好きは否定しませんが・・・

「取引回数が増えれば増えるほど負ける可能性が高くなる」

っていう相場の法則知ってます?

「あー、株価上がったかなあ」なんていちいち気にしてたらキリがないでしょ?
相場なんて気にしちゃダメなんですよ。
相場をたくさん見るから、無駄なエントリーや無駄な決済、ロスカットが増えるんです。

だから自分は意識的に相場を見る暇もないくらい没頭できるゲームや漫画に時間を割いているんです。

あえてのゲームですよ、あえて!

土屋さん、1日一緒にいればそれくらいのことは気づくかと思ってたのに全然気づかなかったですね・・・

残念。



まあそういうことなんで。
では。

下山

========================================================




下山からの返信を見て土屋は少し納得した。
下山が言うように、何も気づいていなかった。
確かに下山をただのゲーマーだと思っていた。

「そういうことか・・・」

土屋は呟いた。

翌朝、土屋は前日に撮影したビデオを見直してみることにした。
何か見逃しているヒントがあるのではないだろうか、と期待しながら。

しかし、モニターには2人のおっさんがゲームをするシーンが永遠と映し出されるだけだった。

「おれ意外と楽しそうやなあ。」

土屋は思わず口元が緩んだ。


モニターには2人の昼寝タイムが映し出されていた。
おっさん2人がただただ寝てる姿が録画されていた。

「日高ここはビデオ撮らんでええやろ(笑)」

そして、下山が株トレードを行うそのシーンまで早送りしようとしたその瞬間、土屋は違和感を覚えた・・・。



・・・・



その映像を見た次の瞬間、土屋は青ざめた。
映ってはいけないモノが映っていた。



土屋は下山のマンションにすぐさま向かった。
そしてマンションのロビーでインターフォンを連打した。

「はい・・・」

下山が寝起きの声で応答した。

「しもちゃん、おれや!部屋に入れてくれ!早く!」

オートロックが解除され、土屋は下山の部屋まで猛ダッシュで到着した。
玄関のドアを叩いた。

「しもちゃん、おれや!開けてくれ!」

玄関の鍵を下山が開けると、そこには顔面蒼白の土屋が立っていた。

「しもちゃん、かなりヤバいことになったかもしれん。
今すぐこの部屋を出てくれ。」