ニート生活に成立する荒稼ぎ投資手法1ーゲーム漬けの先にある利益は現実か?ー
INTRODUCTION
あとはこの手法が本当に使えるのかどうか、確かめるだけだった。
土屋は、『下山がこの秘技を実際の相場でどうやって使っているのか』を
早く確かめたくてウズウズしていた。
が、土屋には、その前に一つどうしてもやっておかなければいけないことがあった。
それは・・・
土屋とのミーティングを終え、下山は帰宅した。
土屋との時間がそれほど長くなかったため、疲れはあまり無かった。
疲れよりも、下山の脳内はゲームのことでいっぱいだった。
そしてパソコンの電源をつけてゲームを始めようとしたが、一瞬思いとどまった。
「土屋さんにメールでも送っておくか」と考え、文章を書き始めた。
=================================================
From:下山敬三
To:土屋社長
Title:【波乗り投資手法のおさらい2】土屋さん
どうも。
今日お伝えした秘技は理解できましたか?
土屋さんは、まだ実際にトレードをしていないのでそこまでピンときてないかもしれませんが・・・、土屋さんが想像している以上に破壊力を持つ技なので、必ずマスターして下さい。
実際に使ってみればすぐにその圧倒的な威力に気づくと思います。
このメールでおさらいとしてもう一回説明しようかと思ったのですが、長文になってしまうのでやっぱやめます。
でもポイントだけはお伝えしておきます。
一番押さえてもらいたいことは
『含み損が出ても、他のポジションで利益を出して、相殺決済で含み損を消していく。』ということです。
これがしっかりできれば今後、面白いくらいに"含み損"が消えていきます。
分かりやすく言うと・・・
「テトリスで、隙間がある部分にブロックを埋め込んで列を消す」まさにあの感覚です。
例えば、
凹←この形に
凸←これを
上下さかさまにひっくり返したものをかぶせれば、3列一気に消えますよね。
含み損で凹んだ資金を、他のポジションで生み出した利益で埋め込むということです。
明日は、自分の取引履歴を見せながら実際にどうやって相殺決済するのかお見せしますので楽しみにしていてください。
以上です!
では、ゲーム始めます。
下山敬三
=================================================
下山は優しかった。
一見、面倒くさがりでぶっきらぼうな面もあるが、根っこの部分は誰よりも優しかったし、強い責任感も持ち合わせていた。
『波乗り投資手法を教える以上、絶対に稼がせる』誰に教える時も、その気持ちを決して忘れなかった。
そしてその気持ちは、土屋に送ったメールにもしっかり現れていた。
『100%理解してほしい』という熱い想いが溢れていた。
土屋にもその想いはしっかり届いていた。
そして土屋はこんなメールを返信した。
=================================================
From:土屋
To:しもちゃん
Title:Re:【波乗り投資手法のおさらい2】しもちゃん
今日も素晴らしい講義サンキュー!!!
いやー、含み損が消えるっちゅうのは目からウロコやったわ。
これ、しもちゃんが考えたんやろ?
すごいわ、マジで。
今日この秘技の話を聞いた時も素晴らしいと思ったけど、あれからしばらく考えてみて、さらにこの秘技のありがたさがジワジワ身に沁みてきたで。
これから一生、含み損を恐れる必要が無いわけやからな。ほんま最強やな。
ただ・・・
>分かりやすく言うと・・・
>「テトリスで、隙間がある部分にブロックを埋め込んで列を消す」この例えは、分かりやすいようで、よー分からんわ(笑)
要するに、マイナスとプラスを合算して消すってことが言いたいんか?
まあ明日、しもちゃんの取引履歴見せてもらったときにまた教えてくれや。
めっちゃ楽しみにしとるわ^^
ほんじゃなー!
明日も3時に日高が迎えに行くしな。
日高と一緒にゲームやったらあかんで(笑)
土屋
=================================================
土屋のメールを確認した後、下山はゲームに没頭し、気づかないうちに眠りに落ちた。
そしてその翌日もまた、部屋中に鳴り響くチャイムの音で目が覚めた。
ピンポーン寝ぼけ眼で、下山がインターフォンに応答した。
『はい・・・』
『おー、おれや!』『はい?』
『おれや、土屋や。開けてくれ。』『ん・・・土屋さん?
なんで?
日高さんは?
ていうか今何時ですか、早くないすか?
ていうかまだ9時40分じゃないですか!?』
『質問が多すぎや。まあええから。とりあえず開けてくれや。』『はい・・・』
マンションのオートロックを解除してから2分後、土屋が下山の部屋のチャイムを鳴らした。
下山がドアの鍵を開けて顔を出した瞬間、土屋が間髪入れずに話し出す。
土屋は手に持っていたマイクを下山のアゴに当てた。
下山は、できるだけ土屋の方を見ないようにした。
できるだけ土屋の方を見ないようにしたかったけど無理だった。
その時土屋が山積みにされている漫画を1冊取ろうとして瞬間、マンガの山が一気に崩れ落ちた。
実は下山は、いつも同じ歌を口ずさむことで精神的な落ち着きを手に入れ、自信を呼び覚ましていた。
下山流のルーティーンだった。
「ただの鼻歌やん!」と誰かが笑うかもしれないが、下山は
『どんな場面においても精神的に安定することが何よりも重要だ』ということを自然に理解し、そのための方法論を自然と身につけていた。
そしてゲームで身につけたその感覚は株式トレードにも生かされていた。
「どんな場面でも精神状態を乱すことなく、そして後悔することなく淡々と取引することさえできれば、トータルで利益を獲得することは非常に簡単なことだ。
ましてや資金がマイナスになることなどあり得ない」と下山は考えていた。
そして実際に、1回1回のトレードにいちいち一喜一憂せずに圧倒的に安定した精神状態でトレードをし、6年以上にわたり利益を積み重ね続けていた。
とは言え、今日のゲームだけは土屋の容赦ない口撃がやまず、さすがの下山も心をかき乱され苦戦していた。
そう言いながら下山は腕立て伏せを始めた。
シャカシャカという音をたてるマラカスのマイクが、再び下山に向けられた。
・・・その後、下山は5連敗。
ゲームにばかり夢中になって一向に株式トレードに関する行動をとろうとしない下山に対し、土屋は少々苛立ちを覚えていた。
「1日5分で良い」という話はずいぶん前から聞いていたものの、いざ下山がゲームばかりに熱中するその現実を目の当たりにするとどうしても違和感が拭いきれなかった。
「自分が今まで寝る間も惜しんで必死の思いでビジネスを構築してきた、その人生は一体何っだたのだろうか。
必死で働いてそれでも家族を養うだけで精一杯のサラリーマンが、もしこの状況を見たら何と思うのだろうか。
こんなことが許されるのだろうか?」そんな思いがふつふつと湧いてきた。
下山は、何もかも自分自身で確かめてからでないと物事を信じない人間だった。
たとえ幽体離脱のような怪奇現象にしても、それを練習もしないうちから否定することは無い。
全ての可能性をフラットに考える人間だった。
そして、実はこんな変態的なマインドが株トレードの利益にも通じていた。
あらゆる株価の動きを想定した上でトレードする下山のトレードスタイルは、下山が生来持つこのようなマインドから自然に生まれたものだった。
『自分が株取引をしている企業が明日倒産するかもしれない、そんな可能性も否定しない』これが下山のスタイルだった。
実は土屋も、下山と接する中でなんとなくこのような下山の姿勢に勘付いていた。
2人はマンションを出て、近くの高層ビルに入っている洋食のレストランでランチを食べた。
2人がパスタを食べ終えて店を出る頃には、12時を回っていて店の前には長蛇の列ができていた。
オフィス街ということもあり、下山が言うように12時を過ぎると店内と店の外がサラリーマンで溢れかえっていた。
そんな話をしているうちに、2人は下山の部屋に到着した。
時刻は12時8分だった。
部屋に到着するなり下山はスマホを取り出しゲームを始めた。
2人はその後1時間ほどゲームを楽しんだ。
そして昼の1時になってもまだ下山は株に関して一切触れていなかった。
そして土屋との協力プレーを終えた下山はついに、ドラゴンポーカーというゲームをスマホで、パソコンでズーキーパーをプレイするという二刀流の荒業を始めてしまった。
ゲーム・ゲーム・ゲーム!
ゲームしかやらない下山の姿を見て、
「こんなゲーム好きの男がほんまに株で莫大な金額を稼いでるんか?」と土屋は若干の不安を覚えるようになった。
土屋の言葉を一切聞かず下山は昼寝タイムに移った。
13時20分、下山就寝。
土屋は何もすることがなくなってしまったので、仕方なく下山の横で昼寝をすることにした。
おっさん二人が昼寝をしているという異様な光景がその部屋には存在した。
ピピピピ ピピピピ ピピピピ14時38分、アラームが鳴る。
下山と土屋が目覚める。
下山が枕元に置かれたガラケーを手に取る。
そしてここにきてようやく下山の株式トレードが始まった。
しかし、株式市場が開いているのは15時まで。
15時までの22分間で下山が何をするのか、土屋は見守った。
土屋が最初あれだけ疑っていた『ガラケーで5分以内の取引』が現実に目の前で行われようとしていた。
次の瞬間、土屋は驚くべき光景を目にすることになる。
土屋が下山の1日に密着して暴き出されつつある、プロトレーダーの真実。
ゲームして、ご飯食べて、そして寝る、そんなニート丸出しの時間を過ごしてきた下山が14時38分、ついに動き出す。
株式市場が終わる15:00まで残り22分。
下山はこの22分をどのように使うのか?
この後土屋は、下山の
「22分の驚愕の使い方」を目の当たりにすることになる。
さらに・・・
実は下山が実行している投資は株式トレードだけではなかったことが発覚!
下山が実行しているもう1つの投資とは?
そして下山はなぜそのことを土屋に黙っていたのか?
次回、投資の本質に関わるその理由が開示される。