下山は土屋に過去の取引履歴を公開し、

そのトレードについて1日ずつ丁寧に解説した。



プロのトレーダーがこれほどまで丁寧に

自身のトレードを解説するような機会は極めてレアであり、

土屋もその価値を十分に感じていた。



しかし・・・

ポジションを一切動かさずに何もしない日が何日も続いたり、

しかも『買っても売ってもどちらでもOK』という

根拠がよく分からないトレードがあったり・・・

土屋にとって下山のトレードは、やはりまだ摩訶不思議な部分も多かった。





『相場はランダムに動き、予測することは不可能だ』

ということを理解すれば自ずと下山の行動が理解できるのだが・・・

土屋は相変わらず、下山の寄行に大して文句を言い続けていた。

STORY 12

明かされる月15分の取引で34万円稼ぐトレードの全貌

INTRODUCTION

ただ、それでも、利益だけは着々と積み上がり続けていることは疑いようの無い事実だった。
そんな折、一つの予期せぬ事件が起こってしまった。

廊下に響き渡る爆発音に驚いた下山は、気づけば廊下まで一直線に走っていた。



土屋さん、大丈夫ですか!


下山が怒鳴るような声を上げた。
しかし、土屋からの返答は一切無かった。

煙で視界が遮られ、同じ階の住人が続々と部屋から飛び出し、廊下は一瞬にしてカオスと化した。
そんな中、下山は必死に土屋の姿を確認しようとしたが、土屋らしき姿は一切見当たらない。

「誘拐」

下山の頭にそんな言葉が浮かんだ。
すでに土屋がここにいない可能性もあった。

ただそれでも、

「土屋がいるとすればドアからは、それほど離れていないはずだ。」

そんな希望を抱き、下山は白い煙が立ち込める廊下を探り進んだ。
すると一瞬、廊下の床に光るものが見えた。

下山はそれが何か、一瞬で理解した。
土屋ご自慢の高級腕時計だった。
その時計の位置から土屋が倒れこんでいることは間違いなかった。


「土屋さん!!!」


下山は精一杯の大声で呼びかけたが、やはり返答は無かった。
土屋の首に指を押し当てると、脈はあった。
少なくとも生きていることは確かだった。

そして下山はその後も諦めることなく何度も呼びかけ続けた。


「土屋さん!!土屋さん!!!」


しかし、何度呼びかけても一切反応は無かった。
「救急車を」と思い、下山がその場を離れようとした瞬間、

「しもちゃ・・・」

土屋のつぶやく声が聞こえた。

「土屋さん!?」

見ると、目を閉じた土屋の口がかすかに動いていた。
しかし土屋の口は力なく、また閉じられた。


「おい!!!土屋さん!!!」


なぜかは分からなかったが、下山は直感的に危機感を覚えた。
土屋が生死の狭間を彷徨っているような気がしてならなかった。
そして土屋の名前を大声で叫び続けた。

下山にとって土屋は、『やかましい兄貴』のような存在だった。

色々と手法について文句を言われ続け、ゴリ押しの要求を押し付けられ、面倒な気持ちになることもたくさんあった。
でもそれでも土屋と一緒に時間を共有したいと思えるのは、やはり土屋が根っこに愛情を持った魅力的な人間だったからだ。

そんな土屋の危機的状況を目の当たりにして大声を出さずにいられなかった。



下山が声を絞り叫び続けていると、周りの部屋の住人が続々と集まり始めた。
そして一緒になって土屋の名前を呼び始めた。
六本木ヒルズ内の住民同士のつながりは太く、土屋が普段親しくしている人間も少なからずいた。
中には涙ぐむ人間すらいた。

それでも土屋は起きなかった。
そして誰かが言った。
「早く救急車を呼べ!!!」と。

するとその瞬間・・・、

「・・・やかましいで。」

土屋が急に言葉を発した。

「土屋さん!!!?」

「・・・いや、あれやねん。
しもちゃんをちょっと驚かしたろうと思って、ほんで目つぶってたら、人が集まりすぎて・・・目を開けづらくなってもうて・・・」


「えっ、てことはもしかして・・・、ずっと意識があったってことですか!?」

「せや。」

土屋があっけらかんと答えた。

「なんだよ!!心配して損した。」

周囲からも失笑が漏れた。

「まあまあ。
ていうかこういう場合って、"とにかく土屋さんが無事で良かった"とかそういう言葉があって然るべきなんちゃうんか!?」


「いや、土屋さんとか死んだら良かったんですよ!」

「おいおい、それはあかんやろ(笑)」

あたり一面を覆っていた白い煙もいつの間にか消えていた。
隣人も半ば呆れ顔で帰って行き、廊下には2人を除いて誰もいなくなった。



ていうか、やることが幼稚なんですよ。
あのタイミングでああいうしょーもないことします?
マジでやめて欲しいんですけど。


まあまあ。
おれが生きとったからこそできる遊びやないか(笑)


いや、何言ってるか分からないですけど。


でも素直に嬉しかったで。
普段素っ気ないしもちゃんが、あんだけおれのことを心配してくれるとは正直思っとらんかったからな。


まあ、ガチで土屋さん死ぬと思いましたから。
相手が土屋さんじゃなくてもああなってましたよ。


いい加減素直になれや(笑)
根は他人に対して本気になれる愛情溢れる優しい男やねんから。


土屋さん、やかましいですよ。
ていうかさっきの爆発ってやっぱ日高さんにやられたんですか?


いや・・・それが分からへんのや。
部屋を出た瞬間、爆音と共に目の前が真っ白になって・・・


なって?


いきなりこのザマや。
誰が何をしたんかは分からへんけど、気付いたらおれは倒れとったわ。


恐らく、日高の仕業でしょうね。
まあプロのボディガードですし、発煙する何かしらの装置を持っていたんでしょう。


せやな。
せやけどこれで奴が黒っちゅうことは、ほぼほぼ確定やな。


ええ。


下山と土屋はいったん部屋に戻ろうとした。
その時、下山は床に封筒みたいなものが落ちていることに気づいた。



土屋さん、そこに何か落ちてます。


えっ?


白い封筒だった。
土屋はそれを拾い、中を覗いた。



なんですか?


しもちゃん・・・これ・・・


土屋はこわばった表情で、封筒の中に入っていた数枚の写真を渡した。



これ・・・


そこには下山と土屋が写っていた。
ちょうど土屋の車に2人が乗り込む瞬間にシャッターが切られていた。




この写真が何を意味するのかは分からんけど、どうやら完全に監視されているようやな。


今日も後をつけられていたということですか・・・。


やな。
まあでも、ここは安全や。
セキュリティも万全やしな。


いや、さっきあんなことになって安全だと言い切れますか!?


言い切れる。
大丈夫や、日高以外のボディガードにも警備を依頼済みや。

ただ今後、日高にはマジで気をつけなあかんな。
と言っても今すぐどうこうできることちゃうし・・・。
ほなとりあえず続きしようや!


は!?
続きって?


しもちゃんの取引履歴を振り返るんやんけ!


いや、今日はもういいでしょ(苦笑)
あんな事件も起こったことですし・・・


あかん!
どうせ他にやることがあるわけちゃうんやし。
ていうかもうすぐ1ヶ月目終わるとこやったやろ?


・・・はいはい、分かりましたよ・・・。
多分何言っても聞かないでしょうし。
あと1日でしたね。
じゃあ最後サクッと終わらせましょう。
早く帰りたいんで。


は!?
どこに帰るんや?


いや、家ですけど。


あかんで。
しもちゃん殺されんで、ガチで。
今はボディガードはおらんのや。
せやから今日はうちに泊まらしたるわ。


泊まらしたるわじゃなくて・・・全力で遠慮しますよ。
心配しなくても大丈夫ですって、自分だって毎日筋トレしてますし。


ゲームに負けたときにやっとったアレな(笑)
ていうかあの程度の筋トレで日高に立ち向かえると思っとるんか!?


逃げることくらいできるんじゃないですか?


やめとけやめとけ。
今日はうちに泊まりや!
これで決定や!


えっ、一晩中土屋さんに付き合わないとダメなんですか?


株について語り合おうぞ。


なんですか、それ。
完全に情報目的じゃないですか!


そんなこと言いながら、実は楽しみにしとるんやろ?
わかっとるで(笑)
まあええわ、とりあえずしもちゃんの"取引履歴"解説講座、始めてくれや!

ちょうどホワイトボードにもさっき書いたんが残っとるやん。
4月28日の取引が・・・3625円の買いポジションを決済して利益が99,000円出たんやったな。


【4月28日:株価3724円・決済】

【◯】3990円

【◯】3900円

【◯】3625円 ←4月28日決済(利益99,000円)

【×】3612円 ←4月22日に保有

【×】3507円




土屋さんにはついていけないです・・・


ええから早よ始めてくれや!


はいはい・・・、4月28日の取引は、3625円の買いポジションを決済して利益が99,000円でしたね。
相殺決済をせずに、結局利益を取っておこうと考えたんですよね。

パソコン開くんでちょっと待っててください。



結局いつも土屋がペースを作っていた。
そしていつも下山は嫌々ながらそれに従っていた。


準備できましたよ。
えーっと4月29日が祝日なので、次は4月30日の取引ですね。
ついに4月最終日です。

終値は・・・3660円ですね。
この日は買いポジションを入れました。


【4月30日:株価3660円・買い注文】

【◯】3990円

【◯】3900円

【◯】3660円 ←4月30日に保有

【×】3612円 ←4月22日に保有

【×】3507円




おっ、前日に続いて動きありやな!!
そのこころは!?


まあ何度も言ってきたことですが、まずはこの後相場が上がっても下がっても、どっちにしろ利益が出るようにするためにはどうしたら良いのかを考えます。


せやったな。


ということでまずこれから先、株価が3660円以下に下がった時のことを考えますね。

もし株価が3660円以下に下がり続けたら、"3612円の売りポジション"があるのでそのポジションで利益を取ることが可能ですよね?


おう、せやな。


だから相場が下がる分にはOKです!
一方で、株価が反発して3660円から上昇したらどうですか?


3900円の買いポジションがあるし、それで利益とったれ!
ってことやろ?


まあそれでも良いんですが、3900円って3660円からかなり値幅がありますよね?
240円も値幅があります。

ですから、一旦ここで3660円で買いポジションを保有しておいて、もし実際に3660円から株価が上昇したら3660円のポジション単発で利益を獲得するか、もしくは3660円と3900円のポジションで"相殺決済"を狙うことを考えました。


相殺決済?


え、まさか忘れたんですか(苦笑)?

含み損が出ているポジションと、含み益が出ているポジションを同時に決済して、トータルで利益を出すという手段です。

今回のケースですと、3660円と3900円の中間の価格、3780円以上まで上がってくれば3660円と3900円を同時に相殺決済してしまうのもアリですよね。
言ってること分かります?


えっ?
株価が3780円以上になった時に、3660円と3900円を同時に相殺決済・・・?


自分で計算してみてくださいよ・・・。
まず3660円と3900円の中間の価格、3780円で決済すれば利益も損失も出ませんよね?

3780円で決済したとき、それぞれのポジションの損益は

(3780円 —3660円) × 1000株 = +120000円

(3780円 —3900円) × 1000株 = −120000円

になって、この2つの損益を合算すると、

120000円—120000円=0

で、利益も損失も出ないことになります。
そして、3780円以上で決済すれば利益が出ます。

たとえば3790円で決済なら、それぞれのポジションの損益は

(3790円 —3660円) × 1000株 = +130000円

(3790円 —3900円) × 1000株 = −110000円

になって、この2つの損益を合算すると、

130000円—110000円から20000円

の利益が出ることになります。


ほう、なるほどな。
よお考えとるなあ、ほんま感心するわ。


今さら感心しないでください(笑)
これ、何回も話してきたことですからね!


そうカリカリすんなや(笑)
ていうか、ほんま聞けば聞くほど秀逸な手法な気がしてきたで。


そおですか?
それはどうも。

でも、"相場が上がっても下がってもどちらでも困らないように"という考えを持っていれば自然と行き着くトレード手法だと思いますよ。

この手法の場合、"絶対こうしなければいけない"というルールがほとんど無いので、だからこそ迷うこともあるかもしれませんが、"上がっても下がってもどちらでも困らないようにする"ということを追求してトレードすれば自然に利益は積み重なります。


ん~分かったような、分からんような・・・。
あっ、ほんで解説してもらった今の月だけで、しもちゃんは最終的にどんだけ稼いだんや?


えっと、利益は

133,000円と

87,000円と

21,000円と

99,000円なので、合計で・・・34万円ですね。


ほっほー!!、えらいもんやなあ。
なんだかんだでそんなに利益たまっとったんかいな!!
しかも取引回数は全部で・・・


その月だけで8回ですね。


見送りばっかしとったから、そんなもんやろなあ。
にしてもたった月8回のトレードで34万円はマジで異常やでほんまに。

しもちゃんくらいになると取引時間は1回あたり1分程度やから多めに見ても月に15分もトレードしてへんやろ?


そうかもしれませんね。
ただ、トレード以外の時間を使って考えてはいますよ。
どうやってエントリーしよっかなぁとか。


そうか・・・まあそれにしてもすごいわ。
あっ、でも資金量によって利益は変わるんか?
資金が少なければ利益は減るんやんな?


そうですね。
今は1000株でやってますので、それ以下だと利益額は減りますね。
でも逆に資金が増えて、たとえば2000株でトレードすれば、同じ労力で2倍の利益額を獲得することが可能です。


てことはやで、資金を増やせばそれだけで利益はどんどん増えていくっちゅうことか?


そういうことになりますね。
やることは全く同じなのに、利益だけが増えていきます。


いやー、めっちゃワクワクしてきたで!!


満足していただけたようで何よりです。
ということで今日はもう帰って良いですか?


だから何でそんな帰りたがんねん!
今日はここに泊まるんやないか。


えっ、本気で言ってます・・・?


その晩、結局下山は土屋の部屋に泊まることになった。そして2人は深夜まで語り明かした。




この部屋、快適やろ?
しもちゃんの部屋と違って漫画とか服が散乱してへんからなあ。


いや、あれのどこが散らかってるんですか?


あ~、その返し、もうええわ(笑)
それにしても今日はほんま衝撃的やったなあ。
日高は今頃どこで何しとるんやろな。


いやー、かなりショックですね。
信頼してましたし、何かの間違いであって欲しいです。
ていうか何しに来たんでしょうね。


分からんな。
ただ、しもちゃんがこの部屋に来てるっちゅうことを奴は・・・・


知ってたんですよね。
だとしたらかなり怖い気もしますが。


せやな。
奴も素性がバレたことやし、これからは堂々とアクション起こしてくるかもしれんしな。
ほんま注意せなあかんで!


えっ、でも明日は家に帰りますからね?


あかんあかん、ずっとこの部屋おったらええねん。
ほんでおれに株式投資教えてくれたらええねん。


うーわ、情報目的ですか。
絶対嫌ですよ、面倒くさい・・・。
全力で逃げますからね。


そう言うと思ったわ(笑)
あっ、そういえば1つ聞いてもええか?
前も聞いたかもしれんけど、しもちゃんの手法使った人ってみんなどんだけ稼いどるん?


ああ、なんか前にもそんな話をしましたね。
そういえば1人すごいおじいちゃんがいますよ。


どんなおじいちゃんや!?


奥さんが統合失調症らしく、施設におられるそうなんですが、その施設の費用を株で賄っているおじいちゃんです。


めっちゃイケてるおじいちゃんやん!


ですよね。
しかも施設の費用だけでなく自分の生活費も稼いでるみたいですよ。


おうおう、スーパーおじいちゃんやんけ!
実際どれくらいの額を稼いどるんや?


利益額は・・・いくらだったかなあ。
正確には覚えていないですね。
また今度会ったときに聞いておきますね。


一緒に聞きに行こうや。


は?
どういうことですか?


いやいや、そのまんまの意味やんけ。
おれと、しもちゃん2人で、そのおじいちゃんに会いに行って話聞くんや!


えっと・・・、なんで土屋さんが一緒に来るんですか?


興味あるからやないか!
そんなおじいちゃんに会ってみたいやんけ!


マジか・・・また面倒な話になってきたなあ。


すぐそうやって面倒くさがる!
行ってみようや!
何か新たな展開生まれるかもしれんで、これ!


いや、土屋さんにとっては新たな展開があるかもしれないですけど、自分はもう何度もお会いしてますし・・・わざわざ会いに行く意味って・・・。


まあええやないか。
ほんじゃ明日会いに行こ!


なんでいつもそうなるんですか?
無理ですよ、その方にも予定ありますし。


いや、でも波乗り投資法は1日5分やからおじいちゃんも暇しとるはずや!!
さあ、そうと決まったら早速連絡や!


いや、何も決まってないんですけど・・・(苦笑)


はいはい、ごちゃごちゃとしょーもないこと言ってる場合ちゃうで。
電話や電話や。


・・・言い出したらマジで止めないですね。
分かりましたよ、電話してみますよ。


下山は渋々電話をかけ始めた。




もしもし、あっ水野さんですか?
すみません、急に。
1つどうしてもお願いがありまして。
どうしても水野さんについて話を聞きたいっていう人がいまして。
良かったらお願いできないでしょうか?

・・・・・・・あっ、本当ですか?
ありがとうございます。
・・・はい、日程は合わせます!
ちなみに明日なんか無理ですよね・・・

あっ、そうですよね。
・・・えっ明後日なら大丈夫ですか?
すみません、ありがとうございます。
そしたら明後日お願いできますか?

場所はどうしましょうね。
もしよければ自宅まで伺いますが・・・東京からだと遠かったですっけ?

あっ、今東京ですか?
・・・はい、そしたら昼の1時に。
六本木とかどうでしょう?

・・・本当いきなり無理言ってごめんなさいね。
何か美味しいものでも食べながらお話しましょう。
そしたら昼の1時に六本木のミッドタウンのお店で待ち合わせしまよう。

予約入れたらまたメールしますね。
はい、ありがとうございます。
よろしくお願いします。


下山は電話を切った。



土屋さん、明日はやっぱり無理でしたけど、明後日ならOKですって。


おう、サンキュ!!


はいはい、じゃあとりあえず明後日の13時にミッドタウンの店予約しときますね。


おう、楽しみやのお。


翌朝・・・

早朝、土屋の携帯に着信があり、2人はその音に起こされた。
寝ぼけ眼で土屋は応答した。



宮下です、ボディガードの。


・・・おいおい、どういうことや?
こんな朝早くから何やねん!!


申し訳ありません。
ただ、一刻も早くお伝えしたいことがありまして。
土屋さんに調査依頼を受けて探っていたら、こいつにたどり着いたんですよ。


こいつ?


日高隊長です。
とんでもない野郎ですよ、下山様の手法を盗み出そうとしていたんです。
土屋さんがおっしゃっていたように下山様のケータイからデータを盗み取って、下山様と同じ利益を出そうともしていたみたいです。



マジかあいつ・・・目覚め最悪やわ。
でもそれ、確かな話なんやろうな?


はい、間違いないです。
自白もさせましたし。


なるほどな・・・。
で、奴は今どこにおるんや?


今は、他の者が別室で見張っています。
この後、本社に引き渡して判断を仰ぐつもりです。


分かった、後でまた詳しく話を聞かせてくれ。
ちなみに奴が捕まったっちゅうことは、もう安全やと考えて良いんか?


はい、ご安心ください、大丈夫です。


OK、ほんじゃもう1つ任務や。
今からこっちに来て、しもちゃんを自宅まで送ったってくれるか?
今六本木におるわ


かしこまりました、そうしましたら日高の見張りを1人おいて、3人で向かいます。


おう、そうしてくれ。


はい、よろしくお願い致します。


そう言って電話は切れた。

そうこうしているうちに3人のボディガードが到着した。
土屋は下山に事実を伝えた。
そして下山はボディーガードの車に乗りこみ、自宅へと向かった。

しかし土屋と下山が別れた数分後・・・
再び土屋のスマートフォンが鳴った。
スマホの画面には"公衆電話"と表示されていた。
少し不審に思いながら土屋は画面をタップして応答した。





はい。


土屋様ですか!?


はい、どなたです?


日高です!


おい!
お前よくもまあ、あっけらかんと電話なんかしてこれたのお!!
何してくれてんねん!!


時間がありませんので、手短にお話しします。
犯人は私の部下4名です!


おいおいおい、アホか。
犯人はお前やっちゅう確証を得とんねん!
今さらアホなことぬかすな!
ていうか今お前どこにおんねん!
捕獲されとるんちゃ・・・まさか脱走したんか!?


聞いてください。
私は部下4人の動きが怪しいことに気づいてから奴らの行動を監視し続けました。
奴らが下山様のノウハウやデータを盗もうとしているという確定的な証拠を掴もうとしました。

ところが、奴らにそのことを気付かれてしまったんです。
バレたのは・・・そうです。
土屋様のご自宅に行った時です。
その時私は部下の行動を土屋様に報告しようと思っていました。

しかし奴らがそれを阻止したのです。
そして私は監禁されました。
そしてつい先ほどまで監禁されていたのですが、見張りが1人になった隙に逃げてきました。


・・・


土屋は言葉を失った。
もう誰を信じて良いのか分からなくなっていた。



もしもし、土屋様?


それほんまなんか・・・。


はい、真実です。


その言葉を聞いて、土屋は青ざめた。





仮にお前が言っとることが真実やとしたら・・・今しもちゃんは危険な状態にあるっちゅう話やないか・・・